バイオマスボイラーの運営において重要な要素を大別すると、以下の3点と考えています。
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長時間安定的に燃焼できる燃焼炉
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燃料調達
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オペレーターの熟練度
今回から3回に分けて、それぞれを解説していきます。
「①長時間安定的に燃焼できる燃焼炉」
万能型燃焼炉ボイラーシステムの「万能型」という名の由来は、「有機物であればどんな固形燃料でも燃やす」という意味で名付けられています。
バイオマスをはじめとする固形燃料については様々な物体が混入します。例えば木質チップ1つをとっても、木質が持つ含水率は常に異なり、中には釘や鉄くずが含まれることも珍しくありません。運搬中にダンプ車の荷台を覆っている鉄板が剥がれ落ち、燃料と一緒に燃料ヤードに運ばれてしまい、ボイラーの燃料搬送系統で詰まることもあります。
小型バイオマスボイラーの安定稼働が難しいのは、燃焼炉が小さいためにこのような問題に多大な影響を受けることが最大の要因です。しかし原因が分かっているからと言って、含水率を常時一定にするのは困難であり、釘や鉄くずを完全に取り除くことも現実的には不可能です。
そのような問題を解決するべく開発された燃焼炉が「万能型燃焼炉ボイラー」です。
万能型燃焼炉ボイラー フロー図
万能型燃焼炉の最大の特徴は、燃焼炉床面にあたる「火格子コンベア」が特殊鋼鉄製のクローラー構造(キャタピラ)になっている点です。この火格子コンベアによって燃料炉全体でバランスよく燃焼を促し完全燃焼させ、燃焼灰を断続的に取り除くことが可能となり、ボイラーの長時間稼働を実現しています。
燃やして発生させた熱は燃焼炉上部の水管ボイラーで熱交換し、蒸気を発生させます。廃熱はサイクロン、バグフィルターを通り飛灰(フライアッシュ)を取り除いた後、最後は煙突で150℃以下となり、NOxやSoxといった大気汚染防止に関する規制値をクリアしてから大気放散していきます。
燃焼炉の様子
燃焼炉の温度は随時900℃から1,000℃で完全燃焼しています。燃焼空気が下部と側面から供給されており、壁は耐火レンガで覆っています。
火格子コンベア
燃焼炉床面の特殊鋼で作られたクローラー構造の火格子コンベア。火格子コンベアは、目視では動いているか分からないほど低速で稼働しており、1周するのに1時間以上かけることで完全燃焼を図っています。
ボトムアッシュ(燃焼灰)
燃焼炉の下から出てきたボトムアッシュ。灰の色は白く粒子も細かく大変きれいであることから、完全燃焼していることが分かります。
炉床を動かしながら燃焼炉全体の温度を常に1,000℃前後で保つことによって、安定燃焼と継続稼働を図っています。